もはやYouTuberはれっきとした職業として認知されており、とんでもない額を稼ぐ人たちが大勢います。
そこまでとは言わずとも、副業としてYouTuberで稼げないかな?と考えるサラリーマンも増えてきました。
でも公務員がYouTuberで稼ぐのはダメだよね?
その通りです。結論から言うと、公務員がYouTubeの広告収入(アドセンス)で稼ぐことはほぼアウトです。
・・・ですが!
ぶっちゃけ、案件収入ならアリです!
まず、YouTuberの収益の仕組みについて知っておく必要があります。
大きく分けて3種類あります。
公務員が知っておくべき、YouTuberの収益3種
①アドセンス広告収入
YouTubeを再生すると、CMが流れることがありますよね?
あれはアドセンス広告といって、自分の動画に広告を掲載すればYouTubeから報酬をもらえるという仕組みです。
人気動画はたくさんの人がCMを見てくれるので、購入に繋がる可能性が上がります。
これを利用して、視聴者の数に応じて動画主に相応の報酬をあげるよ!というシステムです。
多くのYouTuberはこれをメインとして稼いでいますが、視聴者層や広告費の変動によって大きく収益が変わるため安定しません。
また駆け出しのころは1再生あたり0.1円が相場と言われており、かなり厳しい世界だといえます。
②スーパーチャット・メンバーシップ収入
スーパーチャットとは、YouTube生配信・プレミアム配信中に視聴者が動画主にお金を送ることができる機能です。
いわゆる「スパチャ」「投げ銭」だね!
金額は視聴者が決めることができるので、時には数万円がドンドコ投げ込まれることもあります。
特にVtuberがスパチャで稼ぐ額は桁違いです(たった1時間で877万円稼ぐVtuberもいます!)
もちろん、知名度があるほどスパチャしてくれる人は増えますが、それ以上に熱狂的なファンがどれだけいるかが勝負みたいなところがあります。
とはいえスパチャで稼げるレベルのYouTuberは一握り中の一握りなので、あまり参考にはならないでしょう。
一方メンバーシップは、月額制コンテンツを配信して収益を得る方法です。
月額料を払ってでもみたい!と思えるようなコンテンツを継続的に配信することが求められるので、こちらも相当ハードルが高いといえます。
③案件収入
知名度や人気が高ければ、企業等から個別案件が来ます。
この商品を紹介して欲しい!その知識をぜひともウチの雑誌で書いて欲しい!といったように、商品紹介から本の出版、講演依頼など多岐にわたります。
最近YouTuberがテレビCMに出たり、有名企業とコラボすることが多いですが、そういったYouTube以外の収入を案件といいます。
影響力が強いほど案件をもらえる可能性が高く、単価が高いことが多いので、ベテランYouTuberの中には案件収入がメインという方もいらっしゃいます。
そこまで有名にならなくても、専門的な分野を狙って配信し続けることでニッチな影響力を持つことができるよ!
後発のユーチューバーが稼ぐには、ニッチ分野に特化した方法がもっとも手堅いと言われています。
公務員がYouTubeで収益を上げてもいいの?
YouTubeで稼ぐと言っても大きく分けて3つの方法があることが分かりました。
さて、本題に戻ります。
結論から言うと、公務員がYouTubeで稼ぐ場合
×アドセンス広告収入はNG
×スーパーチャット・メンバーシップ収入はほぼNG
○案件収入は単発なら原則OK
ということになります。
その根拠を、公務員の副業を規制している法令から確認しましょう。
(私企業からの隔離)
第百三条 職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
② 前項の規定は、人事院規則の定めるところにより、所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合には、これを適用しない。
③ 営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は、人事院規則の定めるところにより、株式所有の関係その他の関係について報告を徴することができる。
④ 人事院は、人事院規則の定めるところにより、前項の報告に基き、企業に対する関係の全部又は一部の存続が、その職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。
⑤ 前項の通知を受けた職員は、その通知の内容について不服があるときは、その通知を受領した日の翌日から起算して三月以内に、人事院に審査請求をすることができる。
⑥ 第九十条第三項並びに第九十一条第二項及び第三項の規定は前項の審査請求のあつた場合について、第九十二条の二の規定は第四項の通知の取消しの訴えについて、それぞれ準用する。
⑦ 第五項の審査請求をしなかつた職員及び人事院が同項の審査請求について調査した結果、通知の内容が正当であると裁決された職員は、人事院規則の定めるところにより、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。
(他の事業又は事務の関与制限)
第百四条 職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
出典:e-Gov国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000120#707)
(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
出典:e-Gov地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)
(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000261#382)
要約すると、次の通り。
残念ながら、アドセンス広告収入とメンバーシップ収入は「継続的かつ営利目的」なので、公務員法で規制されている「自営兼業」にあたります。
つまり、 ②許可なく「自ら事業を営む」のはダメ! に抵触します。
いくら「自営」にあたらないと思っていても、判断するのは勤務先や税務署です。
追及されたときに、そもそも公務員がYouTubeの広告やメンバーシップで収益を上げている時点でおかしい!ということになるので言い逃れが非常に難しいです。
一方で案件収入ならば、営利企業の役員になるわけではないですし、よほど大規模に稼がない限りは自営にもあたりません。
争点は、案件収入が「報酬を得る兼業」にあたるかどうかになります。
この点については、ありがたいことに人事院のガイドラインで明確に要件が定められています。
次の2つ両方とも満たす場合に許可がいります。
以下の要件のいずれも満たす場合には、許可が必要です。
出典:「義務違反防止ハンドブックー服務規律の保持のためにー」(https://www.jinji.go.jp/ichiran/ichiran_fukumu_choukai.html)
① 労働の対価としての「報酬を得る」こと
② 「定期的⼜は継続的に従事する」こと
まず、案件収入は「報酬を得る」ことに該当しますので①の要件は満たします。
一方で、単発の案件収入であれば「定期的⼜は継続的に従事する」ことには該当しないため、②の要件は満たしておりません。
したがって、兼業許可の必要はありません。
これを裏付ける人事院の照会例が次の通りです。
【照会例 12】
Q. 単発的に講演を依頼され講演料を得た場合や、研究成果等を雑誌等に単発的に発表し報酬を得た場合などは、第 104 条の兼業に該当しますか。出典:「義務違反防止ハンドブックー服務規律の保持のためにー」(https://www.jinji.go.jp/ichiran/ichiran_fukumu_choukai.html)、太字は当サイトによる
A. 第 104 条における「事業に従事し、若しくは事務を⾏う」場合とは、「国家公務員としての職務以外の事業⼜は事務に、継続的⼜は定期的に従事する場合」を⾔いますので、上記のような単発的に従事する場合は、第 104 条の兼業に該当しません。
なお、国家公務員倫理法・国家公務員倫理規程との関係では、当該依頼元が利害関係者であるときには、あらかじめ倫理監督官の承認が必要です。また、本省課⻑補佐級以上の職員については、講演料や原稿料等の報酬が 5,000 円を超える場合、原則として贈与等報告書を提出する必要があります。
これによると、単発的に講演を依頼され講演料を得た場合等は、兼業・副業には該当しないと明確に回答されています。
講演以外でも雑誌の寄稿や宣伝といった案件もあるかと思いますが、単発かつ社会通念上妥当な報酬であれば兼業にはあたらないので許可なく可能ということです。
地方公務員も、よほどのことが無い限り同じ基準だよ!
公務員法の副業・兼業に当たるケースは許可が必要
一方、「定期的⼜は継続的に従事する」場合は副業・兼業にあたります。つまり、許可が必要です。
例えば、ある商品の宣伝隊長として活動し、定期的に報酬を得ている場合は兼業にあたります。したがって許可が必要になります。
そうなったときに気になるのが「許可基準」ですよね。
実は、許可基準は内閣官房からの通知により、以下の通り明確化されました。
参考にして作成:閣人人第225号「職員の兼業の許可について」に定める許可基準に関する事項について(通知)(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_e.html)
地方公務員も、よほどのことが無い限り同じ基準だよ!
実際に大阪府の事例でも、反復・継続的に報酬を得る場合は許可が必要だと解されています。
3.印税の取扱いについて
出典:大阪府HP 相談室 営利企業等の従事制限について(http://www.pref.osaka.lg.jp/shichoson/jichi/2705sodan.html)、太字は当サイトによる
「(中略)また、地公法第38条の「事業若しくは事務に従事すること」とは、職員が職務以外の事業又は事務に継続的又は定期的に従事することと解されるところである。
したがって、雑誌に原稿を寄稿し、それをもととした出版を反復・継続的に行う場合は、報酬を得て事業又は事務に従事することに該当し、任命権者から許可を受ける必要がある。」(『地方公務員月報 平成7年11月号』自治省公務員課編 24頁から25頁)とされています。
さて、こうなると「スーパーチャットはどうなるの?」という疑問がわいてきます。
労働の対価ではないので報酬には該当せず、単発の収入といえます。したがって、許可は不要のように思えます。しかし公務員倫理的に考えて怪しいところではあります…
この点については、自己判断としか言いようがありません。
公務員がYouTubeをはじめるメリット・デメリット
公務員のYouTube収益化はNGでしたが、それでも案件収入は狙えることが分かりました。
はじめようか迷うなあ・・・
そこで!デメリット・メリットを解説するね!
公務員がYouTubeをはじめるデメリット
①YouTubeからの収益なし
いままで見てきた通り、公務員は「アドセンス広告」「スーパーチャット」「メンバーシップ」収入を得ることができないため、いくら有名になってもお金は発生しません。
ひたすら案件を待つことになります。
とはいえ、ほとんどのYouTuberはよほど有名にならない限りわずかな収益しかもらえないので、デメリットらしいデメリットとは一概には言えません。
まずはアドセンス広告なしで動画を配信し、それなりに再生数を稼げるようになったら、あとはアドセンス広告を貼るだけで収益化できます。
その域に達すれば、いつでも退職してYouTuberとして活動できる!という余裕が生まれます。
②公務員法との兼ね合いが難しい
公務員には「守秘義務」「職務専念義務」「信頼失墜行為の禁止」という大原則があります。
したがって、動画を配信するときも細心の注意を払って法令遵守しなければなりません。
業務で知り得たことを配信してはいけませんし、業務時間内に編集作業することはもっての外です。
これらは比較的守りやすいですが、難しいのが「信頼失墜行為の禁止」です。
不特定多数の視聴者が動画をみるため、ちょっとした言動が批判につながってしまう可能性があります。
もし顔出しをしている場合は公務員であることが特定されて炎上してしまうかもしれません。
いくら収益化していない趣味の範囲だとはいえ、職場から厳重注意されてしまうこともあり得ます。
顔出しなし、不注意な言動には徹底的に気をつけることが重要だね!
公務員がYouTubeをはじめるメリット
①公務員の副業全面解禁時にスタートダッシュをきれる!
公務員の副業全面解禁は間近に迫っています。
既にガイドライン内であれば副業してもまったく問題ありません。
ぶっちゃけ、副業のおかげで若手の方がずっと稼いでいることがあるよね笑
コロナによる税収減少もあいまって、公務員の副業全面解禁はいずれほぼ確実に訪れるでしょう。
こうした状況なので、いまから準備している人は強力なスタートダッシュを切ることができます!
たとえばいまからYouTubeチャンネルを開設をして、ある程度人気を得た場合、副業解禁に合わせてアドセンス広告を貼るだけでドンッと収益化できます。
もし副業解禁と同時に始めた場合、ほかの公務員たちとの競合になり過酷な競争になるでしょう。
YouTubeは先行者がものを言う世界なので、今から準備することで一気に差をつけることができます。
②本業に活かせるスキルが身に着く
YouTubeは動画編集能力、表現力、問題解決能力といった様々なスキルが求められます。
視聴者の反応から、次はこう編集しよう!と考えたり、このアイデアはよさそうだ!と試したりするのは非常にワクワクします!
こういったスキルはYouTubeを運営することでどんどん磨かれていき、仕事やプライベートでも活きてきます。
特に、動画編集能力は家族の動画を華やかにしたり、ちょっとしたパーティーやイベントでも非常に重宝されます。
仕事のスキルも向上するから、YouTube運営は一石二鳥だね!
③案件収入を得ることができる
先に解説したとおり、アドセンス広告収入は得ることができませんが、執筆依頼や講演活動で収入を得ることは原則できます。
特に、専門的な分野に特化して配信し続けるとオファーが来る可能性が高いと考えられます。
例えば、料理チャンネルに書籍化のオファーが来たり、鉄道チャンネルに講演依頼が来たり等々。
ジャンルを絞ってニッチな需要を獲得するのが今から有名になるコツです。
また、ある程度人気のチャンネルを持つことはリスクヘッジにもなります。
たとえば仕事がつらくて辞めたくなったときも、YouTubeで知名度があればアドセンス広告を掲載してすぐに稼ぐことが可能です。
まとめ:公務員にとって、YouTubeは学びと楽しさ
Youtubeをはじめると、自分の手で作品を創り上げていく快感を得ることができます。
普段の公務とはまったく違った世界なので、ドはまりする人も多いです。
その他にも公務員でもできる副業はたくさんありますので、こちらの記事をご覧ください!